俳句鑑賞
湘子の感銘句
- はじめに
- 初みくじ
- 一盞は
- 四萬十の
- 花に鳥
- わが不思議
- 蠅叩
- 父に金
- 血の中の
- 海藻を
- 生きてゆく
- 落葉して
- 人参は
Haiku-Top
by Ikuma Wadachi
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第十一句集『てんてん』より
人参は丈をあきらめ色に出づ 藤田湘子
平成十六年(七十八歳)作。湘子先生には、オレンジ色の西洋人参などもっての他、深紅色の金時人参(京人参)が相応しい。
なるほど、人参は大根や牛蒡にその長さで適わないと諦め、より自分の個性が出せる赤い色を前面に押し出してきたのである。しかし、この「あきらめ」には、単なる諦念ではなく自分の弱点に早々と見切りを付け、攻めに転じようとする意思が満ちている。
自分にとって何が大切であるかと自問する度に、ひとつふたつと消し去り、色、すなわち俳句だけを残したのである。人生を豊かにする方法は、前向きな「あきらめ」なのだと感得すると、それもまた楽しい。
鷹誌同時発表作に、「狂ひ花くるひ尽きたり多摩日和」がある。
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