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藤田湘子の世界 pavo-9.png


俳句鑑賞
湘子の感銘句
  1. はじめに
  2. 初みくじ
  3. 一盞は
  4. 四萬十の
  5. 花に鳥
  6. わが不思議
  7. 蠅叩
  8. 父に金
  9. 血の中の
  10. 海藻を
  11. 生きてゆく
  12. 落葉して
  13. 人参は

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  by Ikuma Wadachi


第十一句集『てんてん』より
  人参は丈をあきらめ色に出づ   藤田湘子
 平成十六年(七十八歳)作。湘子先生には、オレンジ色の西洋人参などもっての他、深紅色の金時人参(京人参)が相応しい。
 なるほど、人参は大根や牛蒡にその長さで適わないと諦め、より自分の個性が出せる赤い色を前面に押し出してきたのである。しかし、この「あきらめ」には、単なる諦念ではなく自分の弱点に早々と見切りを付け、攻めに転じようとする意思が満ちている。
 自分にとって何が大切であるかと自問する度に、ひとつふたつと消し去り、色、すなわち俳句だけを残したのである。人生を豊かにする方法は、前向きな「あきらめ」なのだと感得すると、それもまた楽しい。
 鷹誌同時発表作に、「狂ひ花くるひ尽きたり多摩日和」がある。



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