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藤田湘子の世界 pavo-9.png


俳句鑑賞
湘子の感銘句
  1. はじめに
  2. 初みくじ
  3. 一盞は
  4. 四萬十の
  5. 花に鳥
  6. わが不思議
  7. 蠅叩
  8. 父に金
  9. 血の中の
  10. 海藻を
  11. 生きてゆく
  12. 落葉して
  13. 人参は

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  by Ikuma Wadachi


第十句集『神楽』より
  一盞はせんの利休の忌のために    藤田湘子
 秀吉から切腹を命じられ、利休が自刃したのは陰暦二月二十八日。
 俳句は短い。その十七音の中に姓と号を詠込めば、残された字数はさらに限られる。それでも敢えて「利休忌」では満足できなかった作者の念いの深さが感じられる。湘子先生に「お茶は何流でしたか?」と尋ねると、「江戸千家」と確か答えられた。二十代の頃、紫に白抜きの雪輪紋の袱紗で修行されたはずである。
 「盞」はさかづきの意。私はこの句では、呉音の「サン」ではなく、漢音の「セン」と読みたい。「イッセン」と読んだ次の瞬間、「せんの」とわざわざ振仮名まで付けた同音の響きと重なる。
 「本阿彌光悦卯月は如何なもの着しや」も忘れがたいが、掲出句の飾り気の無さが好ましい。



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