俳句鑑賞
湘子の感銘句
- はじめに
- 初みくじ
- 一盞は
- 四萬十の
- 花に鳥
- わが不思議
- 蠅叩
- 父に金
- 血の中の
- 海藻を
- 生きてゆく
- 落葉して
- 人参は
Haiku-Top
by Ikuma Wadachi
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第七句集『去來の花』より
わが不思議ラムネの玉に始まりき 藤田湘子
俳句の種は驚きである。ふとした心の揺れを、コトバに置き換えようとあれこれ舌先に転がし、思い悩む。湘子先生にいつも教示されたのは『俳句は自分の為に、そして自分を詠え』であった。
それまでに読んだ入門書には、俳句は短いから自分を出さずモノを通して語れと書いてあった。確かにそうだが、そのコツが分らず、往々にして意味不明の言葉と季語を並べ自己満足に陥っていた。しかし、もっと自分を出していいのだと納得すると急に身体が軽くなった。
掲出句の、自分の事実体験を回想する助動詞「き」で止めたところ、湘子先生の芸である。
昭和五十九年五月六日の同日作に、名句「藤の虻ときどき空(くう)を流れけり」がある。
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