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藤田湘子の世界 pavo-9.png


俳句鑑賞
湘子の感銘句
  1. はじめに
  2. 初みくじ
  3. 一盞は
  4. 四萬十の
  5. 花に鳥
  6. わが不思議
  7. 蠅叩
  8. 父に金
  9. 血の中の
  10. 海藻を
  11. 生きてゆく
  12. 落葉して
  13. 人参は

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  by Ikuma Wadachi


第二句集『雲の流域』より
  生きてゆく力秋暑の靴埃     藤田湘子
 昭和三十五年作。三十四歳。観念と現実がぶつかりあう句。
 披講では「イキテユク/チカラシュウショノ」と句切りながら「力」をやや高く強めに発声する。しかし、意味的には「生きてゆく力」と「秋暑の靴埃」のふたつである。
 「生きてゆく力」は測ったり観たりできるものではない。ただ感じるもの。それを「靴埃」から作者と共感できるかどうかが俳句の楽しさに他ならない。俳人は極微の世界から宇宙を見上げる。朝ピカピカに磨き上げた革靴の先が、午後には仕事廻りで、もううっすらと埃を被っていたのである。
 湘子先生の雅号には、「生死」の念いがあった筈である。句集『一個』には、「死ぬほどの位もなくて旱かな」がある。



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