轍 郁摩 抄出 |
旧作より、こころに残る作品を紹介
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1993年 第21回 鷹新人賞作品より 晩秋の夕べ弦楽器は女体 バロックの楽水のごと黄落期 鳥渡る薄き肉ある己の背 ふつつりと切るための髪洗いをり とどまるは穢るるごとし草いきれ 鰺刺や肺腑つめたきものを欲る 浦びとに風の名を聞くきんぽうげ こころゆくまで嘴研ぎて鳥の恋 鰤起しこころ封じの膝を抱く 鴛鴦や日を容れて雲なみうてり 雪止みて白濁の夜をのこしけり まなぶたのごと翅閉づる冬の蝶 1995年 第30回 鷹俳句賞作品より 日本に目借時ありセナ爆死 蟷螂も吾もぎくしやく生きてゐる 霜夜なり男女のあひのチエスの黙 暖炉燃ゆ女はチエロを股挟み 雪祭果てたる星のつぶてかな みづうみのつくりし雲や酢茎噛む わが思ふことを子の言ふ春の道 サングラス外せば泣いてゐる女 いなびかり美童世阿弥をおもへる夜 |
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