轍 郁摩 抄出 |
旧作より、こころに残る作品を紹介
|
1988年(S.63) 第16回 鷹新人賞作品より 地下街の列柱五月来たりけり 梅干の種の真赤に時雨けり 冬晴やポップコーンを鷲掴み くちびるをしづめてみたる初湯かな かの子忌のスポンジの泡とめどなし はらわたを洗ひたき日の卯波かな 大鮹のもぢゃらもぢゃらと近づき来 海鳴やこの夕焼に父捨てむ 西瓜たたけば前(さき)の世の水の音 1990年 第25回 鷹俳句賞作品より 凌霄花やものの影濃き土佐の国 鮫の鰭峻険にして避暑期なり はればれと十月来たりハイヒール 白菜を割るや夜空の重たかり 身のうちに鮟鱇がゐる口あけて 大硯寒九の水に沈めけり 缶切はうしろ進みやあたたかし 春月や伸びてみづ吐く貝の管 つばくらめナイフに海の蒼さあり |
|