月別アーカイブ: 7月 2025

翡翠逍遥

  

Hisui202507122a.jpg

『翡翠逍遥』の表紙

米国の起業家、イーロン・マスク(Elon Musk、1971年生)は、宇宙輸送用ロケットを開発製造するスペースXを立ち上げ、火星に人類を移住させるプロジェクトを計画、推進している。

しかも、毎日のように打ち上げられる実験ロケットや実用衛星やStarshipについて、SNSの「x.com」に投稿される映像を見たり、人工知能「Grok」等の加速度的な発達を感じさせられると、火星への初飛行も間近に迫っているようにさえ思えて来る。

Elon Muskさんがリポスト
Dima Zeniuk @DimaZeniuk · 7月21日
“Every 2 years, we’ll try to get thousands of ships to Mars.”
— Elon Musk

Elon Muskさんがリポスト
SpaceX @SpaceX · 7月19日
Falcon 9 launches 24 @Starlink   satellites from California

Elon Muskさんがリポスト
Dima Zeniuk @DimaZeniuk · 7月18日
The long-term goal is to eventually terraform Mars
 ※ 注:terraform(〈惑星〉を人が住めるようにする, 地球化する)

湯川書房から1997年に発刊された塚本邦雄の『翡翠逍遥』は、彼の超有能な秘書的存在でもあった政田岑生(まさだ きしお)によって、1958年〜1976年頃に執筆された各種新聞、雑誌、機関誌への寄稿や句集、歌集への献呈文、果ては未発表文までもが網羅された貴重な書籍である。

例えば、その中の「卯月遠近法」は、朝日新聞の1976年4月に4回連載され、その3回目に上掲の短歌と文章が掲載されていた。

後年、塚本の第11歌集『閑雅空間』が発表されたときには、「からすむぎ」には漢字があてられ、

燕麥からすむぎ一ヘクタール 火星にもひとりのわれの坐する土あれ

と、訂正されている。朝日新聞の振仮名表記の制限で〈〉付きになるのを嫌い、わざとひらがな表記で発表したのであろう。

しかし、何より驚いたのは、1976年当時、国内旅行でさえ嫌っていた塚本が「火星移住」の夢など持っていたと書かれていた内容である。ほとほと地球の住み難さ、戦争や災害・飢饉・高湿度に愛想が尽きていたに違いない。

日本脱出したし・・・どころか、地球脱出したし・・・の思い幾許か?

ちなみに、1975年6月、人文書院から発行された第10歌集名は、『されど遊星』であった。

Hisui202507122b.jpg

『翡翠逍遥』の揮毫
(ほととぎすのみかわせみのこゑ蒼し)

Hisui202507122c.jpg

『翡翠逍遥』の帯、裏と表

  書  名:翡翠逍遥
  編  者:塚本邦雄
  発  行:1977年1月25日
  発行所 :湯川書房
  装釘者 :政田岑生(まさだ きしお)

参考:

注1:イーロン・マスク〔ウィキペディア〕
  南アフリカ共和国出身のアメリカ合衆国の起業家。(1971年6月28日 – )

注2:レイ・ブラッドベリ〔ウィキペディア〕
  アメリカ合衆国の小説家、詩人。(1920年8月22日 – 2012年6月5日) 


saten_logo80s.jpg

桃太郎の黍団子

Rakugo20250712a.jpg

『落語特選(上)』の表紙

落語の与太郎ではないが、今夜の主役は子供の金坊。父親が寝かそうと思って昔話の「桃太郎」の話をしても、今日ただいまの子供は、理論的でないと納得がいかない。反対に、ありがたい話をしてくれる。

「そうだろ? 黍団子をなぜ拵えたかと言うと、人間は奢ってはいけない。黍のようなまずいものを常食にしろという戒めなんだよ」

なるほど、そうだったのか・・・と、頷いてしまった。
「人間は奢ってはいけない」とは、なんと深みのある解釈だろう。
落語作家も、旨いこと考えるものだな~、と感心させられる。

Rakugo20250712b.jpg

キビ(黍、学名 : Panicum miliaceum )Wikiより

しかし、黍団子も、今では、もち米に砂糖や水飴を混ぜ、そこに黍粉を加えて香りと色付けするような作り方が多く、貧しいから安く作るためや不味いモノではなくなっている。

また、米と言えば、昨年(2024年)の米の生産量が極めて不作だったわけでも無いのに、市場に米が出回らず極端に品薄の有り様。そして、米価が吊上がり、政府は新米の一般競争入札の後、備蓄米に対する法律を変え、古米や古古米、果ては古古古米まで流通させようと、令和の米騒動が演出されている。

2024年に、日照りや大雨による被害の地域があったとしても、本来なら需給不足になるはずのない状況なのだが、人為的心理操作で不足感を煽り、そこに付け込み米価格の上昇を図り利益を得ようとする大組織が、米の先物取引などを行っているからだろう。

Kome20250712c.jpg

『米の生産量』農林水産省 統計部資料より

「あれっ? おとっつァん、寝ちまっつたよ。ひとが話をしているのに・・・寝ちまっちゃしょうがないじゃァないか。大人というものは罪のないものだなあ」

罪のない大人ばかりなら世はことも無いのだが、欲張りや悪人が増えるとお先真っ暗になる。そろそろ新しい「世直しが必要な時代」なのかも知れない。
そうして、お粗末な笑いではなく、芸のある落語をじっくり味わってみたい。

  

  書  名:落語特選(上)文庫
  編  者:麻生芳伸(あそう・よしのぶ)
  発  行:2000年1月6日
  発行所 :筑摩書房
  表紙装画:三谷一馬
  ISBN4-480-03535-4

参考:

注1:キビ(黍、稷、学名:Panicum miliaceum)〔ウィキペディア〕
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%93

注2:農林水産省 農業生産に関する統計(2)米の生産量
 https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/06.html

  


saten_logo80s.jpg

漢字さまざま

  

Youtubeを見ていたら、中国時代劇『九重紫』の新作紹介ビデオが始まった。
ところが、登場人物名と出演者名で、「ウ、ム、む、む〜」の有り様。

Dou20250704a.jpg
Youtube『九重紫』のビデオ映像より

原因は、漢字の種類と読み方の問題に起因している。

もちろん、漢字には、日本で一般的に使われる常用漢字正字(旧漢字)、中国や台湾で使われる「簡体字」「繁体字」があることは知っているが、書けなくても読むくらいはできるとタカをくくっていたのだが、まったく手も足も出ない。

例えば、「竇」に「ドウ」と、フリガナが入っていた。日本では「トウ」とか「トク」、穴蔵とか水路のイメージ。部首が「アナカンムリ」で、下に「売る」の正字「賣る」が入っている。

中国歴史では有名な氏族名なのだろうが、日本史や世界史で習った記憶には一人も居ない。

簡体字はムリとしても、繁体字は日本の正字とほぼ同じだし、長年、塚本邦雄の短歌や評論、小説を正字で読んできたのだから大丈夫のはずであったのだが、人名はさっぱり分からなかった。これだけは、文面や内容から読み取る事もできず、何度も使って記憶するしかないのである。しかし、使う機会も無いとなれば尚更であろう。

私には、帰国子女の友人はいても、大陸育ちの中国人の知人が居ないので名前を覚える必要がなかったからかも知れない。

例えば、「図 と图 と 圖」「関 と关と 關」「広 と广と 廣」「売と 卖と 賣」が、同じだと言われても、慣れないと確かに読めない。

そんなことを考えていたら、Wikipediaの中に、「百家姓」(ひゃっかせい)」なる項目があることを知った。

Hyakkasei620.jpg
百家姓 (ひゃっかせい)の解説より

「千字文(せんじもん)」は有名だし、長詩であっても、各部分の意味もわかりやすく、臨書の見本にも使われているので読む機会も多い。
ところが、「三字経」や「百家姓」については、これまで触手も動かず、ほとんど見過ごしてきた。

なるほど、中国人の子供は、こんな漢字を書いて読んで学習してきたのかと思うと、日本の「いろは」仮名は何と簡単で便利だったのだろうと、弘法大師空海(774~835)に感謝せずにはいられない気持ちになった。

確かに、「いろは歌」を空海が作ったという証拠はまだ無いそうだが、彼の才能あればこそなどと、空想世界がますます広がり続けている。

「2025年7月5日の大災害予言」などが当たらず、この宇宙が平安で美しくありますように。

  

参考:

注1:百家姓 (ひゃっかせい)〔ウィキペディア〕
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BE%E5%AE%B6%E5%A7%93

注2:千字文 (ひゃっかせい)〔ウィキペディア〕
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E5%AD%97%E6%96%87

注3:雪竇重顕(せっちょう じゅうけん)〔ウィキペディア〕
 中国の北宋の禅僧。諡は明覚大師。俗姓は李。字は隠之。遂州遂寧県の出身。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%AA%E7%AB%87%E9%87%8D%E9%A1%95

 


saten_logo80s.jpg