原発がどんなものか知ってほしい

原発がどんなものか知ってほしい(18)

平井憲夫

どうしようもない放射性廃棄物

 それから、原発を運転すると必ず出る核のゴミ、 毎日、出ています。低レベル放射性廃棄物、名前は 低レベルですが、中にはこのドラム缶の側に五時間 もいたら、致死量の被曝をするようなものもありま す。そんなものが全国の原発で約八〇万本以上溜ま っています。

 日本が原発を始めてから一九六九年までは、どこ の原発でも核のゴミはドラム缶に詰めて、近くの海 に捨てていました。その頃はそれが当たり前だった のです。私が茨城県の東海原発にいた時、業者はド ラム缶をトラックで運んでから、船に乗せて、千葉 の沖に捨てに行っていました。

 しかし、私が原発はちょっとおかしいぞと思った のは、このことからでした。海に捨てたドラム缶は 一年も経つと腐ってしまうのに、中の放射性のゴミ はどうなるのだろうか、魚はどうなるのだろうかと 思ったのがはじめでした。

 現在は原発のゴミは、青森の六ケ所村へ持って行 っています。全部で三百万本のドラム缶をこれから 三百年間管理すると言っていますが、一体、三百年 ももつドラム缶があるのか、廃棄物業者が三百年間 も続くのかどうか。どうなりますか。

 もう一つの高レベル廃棄物、これは使用済み核燃 料を再処理してプルトニウムを取り出した後に残っ た放射性廃棄物です。日本はイギリスとフランスの 会社に再処理を頼んでいます。去年(一九九五年) フランスから、二八本の高レベル廃棄物として返っ てきました。これはどろどろの高レベル廃棄物をガ ラスと一緒に固めて、金属容器に入れたものです。 この容器の側に二分間いると死んでしまうほどの放 射線を出すそうですが、これを一時的に青森県の六 ケ所村に置いて、三〇年から五〇年間くらい冷やし 続け、その後、どこか他の場所に持って行って、地 中深く埋める予定だといっていますが、予定地は全 く決まっていません。余所の国でも計画だけはあっ ても、実際にこの高レベル廃棄物を処分した国はあ りません。みんな困っています。

 原発自体についても、国は止めてから五年か十年 間、密閉管理してから、粉々にくだいてドラム缶に 入れて、原発の敷地内に埋めるなどとのんきなこと を言っていますが、それでも一基で数万トンくらいの 放射能まみれの廃材が出るんですよ。生活のゴミで さえ、捨てる所がないのに、一体どうしようという んでしょうか。とにかく日本中が核のゴミだらけに なる事は目に見えています。早くなんとかしないと いけないんじゃないでしょうか。それには一日も早 く、原発を止めるしかなんですよ。

 私が五年程前に、北海道で話をしていた時、「放 射能のゴミを五〇年、三百年監視続ける」と言った ら、中学生の女の子が、手を挙げて、「お聞きして いいですか。今、廃棄物を五〇年、三百年監視する といいましたが、今の大人がするんですか? そう じゃないでしょう。次の私たちの世代、また、その 次の世代がするんじゃないんですか。だけど、私た ちはいやだ」と叫ぶように言いました。この子に返 事の出来る大人はいますか。

 それに、五〇年とか三百年とかいうと、それだけ 経てばいいんだというふうに聞こえますが、そうじ ゃありません。原発が動いている限り、終わりのな い永遠の五〇年であり、三百年だということです。


  

原子力発電がなくても暮らせる社会をつくる国民会議
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